光を掴んだその先に。
「おやっさんの大事な一人娘に手出した」
「……は?」
「悪い、さすがに無理だ。昔とはいろいろ違う」
数秒の沈黙。
そして天井をずっと見つめていたおやっさんは、ここでようやく俺へと視線を移した。
「俺の大事な一人娘は絃っていうんだが。誰のこと言ってんだ、絃織」
「あってるよ。俺が惚れた女の名前は天鬼 絃っていうんだ」
「おい、随分と珍しいな。同姓同名がいるなんてよ」
「ちなみにその娘の名前は俺が名付けた」
我ながら良い名前だと思う。
語呂もいいし、母さんが俺に付けて欲しいと頼んだ意味が分かった。
きっとおやっさんが名付けたらセンスの欠片も無かっただろうから。
「現実見ろおやっさん。あんたの娘はもう17だ。俺は24、極道の世界はこんな年の差はザラだと聞いてる。全然アリだろ」
10離れた嫁を貰う、なんて話もよく聞くほどだ。
それに絃は子供っぽいところがあるから同い歳や年下より年上の方があってる。
……と、俺は思う。
そんな病室はまた沈黙が包んだ。
そして瞬きを数回繰り返した男は、とうとう理解を示したらしい。
「───ぶっ殺すぞ」
案の定といったところか。
もう降格となっても、破門となっても言おうと思っていたことだ。