光を掴んだその先に。




初めて聞かされるものだった。

あの優しい女性は誰よりも優しいから、だからそんな優しさで俺を包み込んでくれたのだと思っていた。


あの人も俺を大罪人の子として見ない1人だったから。



「周りの幸せをいつも願っていたような女だ。そしてお前たちを誰よりも愛していた。そんな2人が選んだ幸せなら……、

───…喜んで飛び跳ねてるだろうな」



少女のような人だった。
それだけは覚えている。

年齢差を感じさせないくらい、いつも屈託なく笑いかけてくれて。


だから俺だってすぐに打ち解けられた。



「それに、こんな未来を俺もお前も…美鶴も。どこかで望んでいたんじゃないかって思うことにするよ」



こんなのは思ったモン勝ちだ、と男は笑った。



「お前のその望みは許可する。だから絃織、お前も俺の望みを1つ聞け」



微かに開いた窓から揺れるカーテン、窓際に置かれたカスミソウ。

そんなものを見つめていると、この人に初めて会ったときから俺の人生は始まっていたのだと思えてくる。



「絃を幸せにしてやってくれ。そんでお前も幸せになれ。
そして絃織、───お前は次の頭(かしら)になれ」


「…1つどころじゃねえだろ。3つもあるぞおやっさん」


「馬鹿野郎、最初の2つは当たり前のことなんだよ。望みのうちにも入らねえな」



あの日、「お前はいつか俺を殺せ」と言われてうなずいた過去の俺は。

哀しみの中でうなずいた俺は。


今度は、目の前に広がる幸福を前にうなずいた───。








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