光を掴んだその先に。
「那岐さんは…那岐さんはね。お嬢を誰よりも大切に思ってますから」
なにか他にもっと大きな秘密を隠しているようで、けれど口をつぐむ男。
そして私に察してくれと、顔色を伺うように眼差しを送った。
「あの人の愛は本物っす」
ドキッと胸が高鳴った。
どこかに違和感はあったけど、彼が私を大切にしてくれていることは十分に知っているから。
「那岐さんとお嬢は、誰にも切れない“絃”で繋がってますから」
その言葉が、いつか自分を苦しめるなんて知らずに。
ただ目の前のありふれた高揚感に胸を高ぶらせることしか、今の私にはできなかった。
「俊吾、…那岐は───」
「きゃぁっ!!もうお爺様っ!」
聞き慣れない声は女のもの。
この場所にいる女は、誰かの身内や昔からの使用人のみ。
みんな大人で私より年上ばかりだった。
そんな悲鳴に私が立ち上がるよりも先に、着物を着た美人は駆け寄ってくる。
「雅美(まさみ)よ、相変わらずお前は良い尻をしておるわい」
そのうしろを追いかける老人がひとり。
逃げ惑う女のお尻をニヤニヤした顔で追いかけて、隙あらば容赦なく触っている。
そして俊吾は何故かアワアワとどこか落ち着かない様子だ。