光を掴んだその先に。
「それから彼女の祖父母が亡くなってしまったりして。…強くなりたいって、美鶴ちゃんのあのときの眼差しは忘れられないわ」
「…お母さんは、元から病弱だったって…」
「ええ、それもあるけど───」
「姉さん」
会話を終わらせたのは那岐だった。
気づけば俊吾はその場にいなくなっていて、組長であるおじいちゃんの姿もない。
そんな周りの動きに気づかないくらい、私は母親の話に聞き入ってしまっていたらしい。
「ごめんなさいね絃ちゃん。おばさん、このあと少し用事があるの。今日はお暇(いとま)させてもらうわね」
「あっ、いろいろ教えてくれてありがとうございました…!」
「ふふ、気楽に話してちょうだい。ここはあなたのお家、私たちは家族なのよ?」
そのとき、それまで育った施設を思い出した。
ずっと忙しい毎日で最近はゆっくり思い返すことなんて出来てなかったけど、みんな元気かなぁ…。
「那岐、那岐はいつからここに居るの…?」
雅美さんが去って行ったあと、沈黙を破ったのは私。
きっとこれは答えられない質問だってこと、それは最初から分かっていた。
この人はいつもそう。
自分の話は、しない。
「……知らなくていい」
知る必要がないとか、知るべきじゃないとか、そうではなく。
知ってはいけない───なんて意味が込められているような気がした。