光を掴んだその先に。
『───…ぼ…く……、』
生き……てる。
あぁ、生かされたんだ。
慣れない布団の上、慣れない匂い、見慣れない一室で目を覚ましたと同時に襖はゆっくりと開いた。
『あ、起きた?ここ日が当たらなくて嫌になっちゃうよね』
『…だいじょうぶです』
『あー、気つかったな?子供は子供らしくしてればいーのっ』
まだ若い人だ。
父親より若く、少女のように笑う女性。
少し細い身体もその笑顔で隠れてしまう。
『…とうさん…は……』
しまった、と気づいたときには遅い。
自分がここで寝かされていることも、気を失う前の記憶も、よく考えれば分かったはずなのに。
父は、天鬼 剣に殺されたのだ。
『…あなたのお家は今日からここだよ』
優しく、ぎこちなく抱きしめられる。
それは母親の記憶があまりない少年にとって初めてのものだった。
『絃織くんだっけ。格好いい名前だね。
…ねぇ絃織、私の息子になっちゃおっか』
『ぼ、僕は……大罪人の…息子です、』
『そんなの関係ない。…生きていてくれてありがとう』
大人ぶった言葉も、なに気にしない表情も、ポロポロと壊れていってしまう。
それを隠してくれる温かい腕の中で、少年は初めて涙を流した。