光を掴んだその先に。
『美鶴っ!!あなたまた花瓶を割ったわね…!?どこに行ったの美鶴っ!!』
世話人である老婆は、そそくさと着物の裾を持ち上げて屋敷内を探して回っている。
『あなたももう21歳になるでしょう!』と、呆れたため息と叱り声は何度目か。
『いい?お婆様が来ても知りませんって言うんだよ?』
『…でも結局いつも見つかってるのに』
『いーのっ!』
日の当たらない一室。
キョロキョロ見回しながら静かに現れた着物姿の女は、押し入れに身を隠した。
そしてドタドタと近づく足音。
スパァン!と、開く襖。
『お坊ちゃん、美鶴は見なかったかい?』
鬼のような形相をした老婆の視線は、本を片手に座る絃織へと。
『うん、そこにいるよ』
ピッと押し入れを指差す。
今までは庇ってきたけど、今回ばかりはそうしないと心に決めていた。
もちろん今は走ってはいなかったとしても、押し入れの冷えた場所に隠れることだってちょっとだけ心配だ。
『もう絃織っ!なんで言っちゃうの!?』
『だってさ、母さん』
養子に引き取られて、少し若い姉のような女性が母親となって。
あれから1年経てば、誰が見ても仲が良いと思うほどに打ち解けられていた。
それはきっと、この美鶴という女の天性の性格のおかげなのだろうけれど。