光を掴んだその先に。
こいつ、自分の立場わかってんのか?
こんな平和ボケして油断したところを常に狙ってる奴らがいるってのに。
「いやいやおかしいでしょっ!!新学期早々気合い入りすぎだっての!!」
「お嬢!おはようございます!!!」
「何台用意してんの!?てか普通に電車で行くってば!!」
ベンツが2台にリムジン1台。
俊吾に任せた俺が馬鹿だったとも思ったが、これぐらいの危機感が必要だと知らしめるには十分だろう。
だとしても、リムジンは誰が乗るんだよ…。
「馬鹿、揃えすぎだ」
「お嬢の新学期となればこれぐらいしなきゃっすから!!」
「こいつは俺が送る」
「えっ、ちょっ、那岐さん…!」
1台のベンツ車のキーを奪い、助手席のドアを開けた。
「乗れ」と顎で指図すれば、腑に落ちない中でも妥協した絃がため息を吐きながら足をかける。
「学校からちょっと離れた場所に停めてよね!」
「それじゃ意味ねえよ」
「目立つじゃんっ!校長に呼び出されるの私だよ!?」
「話は通してあるっつったろ」
「…相変わらず仕事はやすぎでしょ」
さすがに全校生徒に説明することは無理だが、学校関連にはとっくに了承済み。
あとは校内での生活は頑張れってとこだ。
「佳祐とも顔合わせるよね…」
赤信号で止まったタイミング、ウインカーの音に乗せてそいつのつぶやきが響く。