光を掴んだその先に。




私はどうして施設に預けられたのか、みっちゃんに聞いても昔から何ひとつ教えられなかった。


どうして?と何度言ったか分からないくらいに質問していたけど、それでも微笑みが返ってくるだけ。

だからいつからかそんなものすらどうでも良くなった。


だけど佳祐は、小さい頃に彼の身内らしき人が1度だけ施設を訪れたことがある。



『お前は悪魔の子だ。…俺の娘を襲ったクズの子だ』



年配の男は、まだ幼かった佳祐を前にそう言い放って施設を出て行った。

隣に居た私はそのとき、なんて声をかけてあげたらいいか分からなくて、ただ小さな手を小さな手で握ることしか出来なくて。


夜中に声を押し殺して静かに泣いている佳祐を寝たふりして見つめることしか。



「佳祐!」


「…なんだよ」



うつむく顔を無理やりに上げさせて、ぎゅっと躊躇いなく抱きしめた。


サラッと揺れた黒髪、揺れる瞳は小さい頃から何ひとつ変わってなんかいない。

佳祐はやっぱり泣き虫だ。



「生まれてきてくれてありがとう」



年頃の男女が早朝の道端で抱きしめ合っていたとしても、私たちならばそういうものは生まれない。


───だって家族だから。



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