光を掴んだその先に。




伸ばした鼻を見せびらかすように「へへん」と笑っているが、正直羨ましくもなんともない。


逆に痛々しく見えてくるほどだ。
そして勿体ないとも思う。

確実にこれは立場上、絶対に口に出せない台詞だが。



「そういえば前々から思ってたんすけど、那岐さんって刺青入れてませんよね」


「…あぁ」


「煙草とかも一切じゃないっすか。なにか理由でもあるんすか?」



そんな俺を周りは「覚悟がない」と、昔から言っていた。


だから俺は実力で今まで這い上がってきたんだ。

そんなモンが無くったって上に立ってみせると。


それに……、



「…きらい、だったんだ」


「へぇ、珍しいっすねぇ。こういう世界に入る男の中にはそういうのに憧れてくる輩も少なくないっすから」



俺じゃなく、あいつが嫌いだったから。

いつもおんぶ紐や抱っこ紐で俺の傍にいた赤子は、必ず男たちのそういうものを見たら泣いていて。


そこから俺は一生そんなものはしないと誓ったくらいだった。



「てめえも絃の前であまりそれを見せるんじゃねえぞ」


「え…?なんでっすか…?」


「なんでもだ。あと煙草もだからな」


「は、はいっ!」



俺の人生は、絃の上に成り立っている。








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