光を掴んだその先に。




「………だめだ、ぜんっぜん寝れない」



それに今更だけどお腹も空いてきた。

いらない、なんて言ってしまったことを夜中になって後悔する羽目になるなんて。


台所に行けば何かあるかな……。



「もうみんな寝ちゃってるよねぇ…」



布団から起きて、そーっと部屋から抜け出して、台所へ直行。


あまりここに入ったこともないから探検のような気持ちで楽しむことができた。

ガサゴソと冷蔵庫を漁ると、冷凍室にちょうど良さそうなカップアイスをひとつ発見。


夏の夜には持ってこいのものだ。



「それにしても台所も広いなぁ…。台所っていうより、調理場?って感じ」



いつもは決まった時間に差し出される豪華な料理を食べるているだけで、裏はこんなふうになっているのかと。

施設とはまた違った感覚が不思議。


……ここが、私の家なんだ。



「この罪悪感と背徳感っ!逆にいいっ!いっただきまーす!」



誰にも見つからないように漁って食料を発見し、こうして静かな縁側で月を見ながら食べるバニラアイス。

ワクワク感とドキドキ感、悪戯に成功した幼い頃を思い出してどこか楽しい。



「中庭もやっぱり広いし、ここって狭いところないの…?」



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