光を掴んだその先に。




しゃくしゃくと付属の木製スプーンで溶かしながら口の中に運べば、甘さと冷たさが程よくマッチ。

ぶるっと秋の始まりの夜風に肩を震わせつつも、足をぷらんぷらんと揺らす。


こうして寝間着用の浴衣にも慣れてきた近頃。



『…もう家族じゃないってのはこういうことなんだよ』



まだ、昨日だ。
それに夜中だから時間感覚がおかしい。

まるで今日のことなのだ。


あれはどういう意味だったんだろう。



「…初めて……だったのに…」



施設の子供たちはじゃれ合うように頬にちゅっと口付けたり、おでこに口付けたり。

そんなものをしていたから、あれもそういう意味なのかなって思うけど…。


もう16歳だよ私。

さすがに小さな子供じゃない。



「初めては好きな人とって…決めてたのに…、」



じわっと浮かびそうになる涙を隠すように、アイスをこんもりすくって口いっぱいに含む。


唇の柔らかい感触も少々荒い動きも。

囲われた両腕の間から逃れられなかった悔しさも。

ぜんぶこういう静かな夜には思い出してしまう。



「家族じゃないとキスするの…!?返せ私のファーストキ───」


「おい」


「ッスぅわぁっ!!」



……心臓が止まるかと思った。

恐る恐る振り向けば、同じように浴衣姿の男が立っている。



「な、那岐、…こんばんはー、」



スーツ姿じゃないところはどこか新鮮だ。

そして普段スーツに隠れてしまう筋肉が生地の上からも分かってしまうほど。



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