光を掴んだその先に。




「何時だと思ってんだ。…やっぱり腹減ってんじゃねえか」


「…うん、もうちょっとで食べ終わるから…そしたら寝る、」


「いやいい。今日は月が綺麗だからな」



ちょっと日本語が良く分からない。


怒ってるんじゃないの…?

こんな時間に何してんだ、早く寝ろって言いに来たんじゃないの…?

月が綺麗だとそれも許してくれるの…?


気づけば隣に腰かける那岐。



「…えっと、……話きいたりしてた…?」


「…なんのことだ」


「う、ううん!なんでもない…!」



良かった…独り言は聞かれてなかったみたいだ。

こうなるならもう少し時間をかけて食べていればよかった。

でもアイスだし、早く食べないと溶けちゃうし…。


でもやっぱり、静かな夜はどこか気まずいから。



「那岐はいつもこの時間に寝るの…?」


「…今日はたまたま寝付けなかった」


「そうなんだ…。私と一緒」


「腹空かせたわけじゃねえがな」



笑うところだね、ここも。
けどやっぱり色々あって笑えそうにない。


庭のまっすぐ先、チョロチョロと流れる水の反動でカコンッと音を鳴らすししおどし。

その音が今は妙に大きく響く。



「夕焼け小やけの赤とんぼ───…」



あれ…私、こんな歌知ってたっけ…?

だけど1度歌い出すと、スラスラと歌詞が脳内に出てくる。



「負われて見たのはいつの日か───…」



子守唄のようなそんなものを気付けば口ずさんでいた。



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