光を掴んだその先に。




ひまわり園は世間から見れば“可哀想な子”の集まり。

たとえ保育園のように毎日が賑やかだったとしても、親のいない子供たちが生活できるように与えられた、作られた空間。


だけど、私はあの場所が大好きだった。



「…お前のせいで俺まで遅刻する」


「あっごめんっ!行こっ」



ふっと笑ったその顔が昔見ていたものとまったく同じに重なった。


本当の家族がいなくても、自分のことを何も知らなくても。

それでも私は今が十分幸せで楽しい。



「…あ。」


「お、おはよ、天城」


「おはよう天馬(てんま)くん!」



よし、違和感なかった。
ぜんぜん普通だった。

そりゃあ何度もシミュレーションしたんだ。

成功してくれなかったら困る。



「今日すっごく良い天気だね!」


「そう…だな」



そんなありふれた会話。

昇降口でバッタリ会ってしまった男は、クラスメイトの中でも男女に人気な爽やかイケメンこと、田ノ倉 天馬(たのくら てんま)。


誰かさんと違って愛想も良いし友達も多いし、まったく見習ってほしいものだ。

天馬くん、なんて軽々しく呼んでいるけど…。


………夢を思い出した。


そういや白馬の王子様にも振られてたんだっけ、私。



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