光を掴んだその先に。
「厄介事…?」
「どうにも、横浜のほうで那岐さんの名前を使って暴れてる輩がいるとかなんとかで」
えぇ、なにそれ。
確かにそれは厄介な話だ。
人の名前を使って暴れちゃいけないし、そいつらも選んだ人が悪かったとも思ってしまう。
那岐ってめちゃくちゃ敵には容赦なさそうだもん……。
「那岐さん、あした誕生日だってのにツイてない話っす」
「本当にねぇ」
何気に彼の運転する車に乗るのは初めてだった。
CDから流れるボサノバなBGMが逆にどこか落ち着く。
俊吾は誰かさんと違ってこうして音楽を流してくれるからいいなぁ…。
…………って、今なんて?
「えっ、誕生日!?だれの!?いつ!?」
「あ、言ってませんでしたっけ。那岐さん明日で23歳になるんすよー」
「初耳だよっ!!なんでもっと早く言ってくれなかったの!!」
「あはは、言ったつもりでした」と、申し訳なさそうにもしていない様子の俊吾。
赤信号で止まったタイミングで缶コーヒーをズズズッと啜った。
「明日って……なにも用意してないのに…!」
「お嬢のその気持ちだけで十分っすよきっと!」
てかこの話のくだりが無かったら、そもそも明日が誕生日だったことすら知らなかった…。