光を掴んだその先に。
「おかえり那岐っ!」
「あぁ、迎えに行けなくて悪ぃな」
「ううんっ!あのさ、なにかして欲しいこととかない!?」
どうしよう、どうしよう。
まずは何からすればいいんだろう。
施設での誕生日会は前々から考えて計画してお祝いしていたからこそ、こんなにもギリギリのものは初めて。
とりあえず出迎えて聞いてみたものの、じっと見つめてくる瞳は私から何かを探ろうとしている。
「…とくにねえが」
「そんなこと言わずに!あっ、お風呂はいる!?それともご飯!!お腹空いてるよね…!!」
横浜から彼が帰宅したとき、もうとっくに私は夕飯もお風呂も済ませ終えていて。
ふわっと広がる香水に混じる煙草の匂いが、そういう人たちと関わったんだろうなって想像できる。
だって那岐は煙草は吸わないから。
だから那岐から煙の匂いがするときは、周りにいた誰かが吸っていたということ。
「…煙草、匂うか」
「えっ、…いや別に…!」
「ちょっと待ってろ」
すると香水を取り出して、シュッシュッと吹きかける那岐。
本当は少し気になってたからなんとも察しの良い人なんだろうと。
「今日の夕飯はすき焼きだよすき焼き!やっぱこの季節は鍋だよねぇっ」
「今日はいつも以上にハイテンションだな。良いことでもあったのか?」
「そ、そう…?普通だよ普通っ!」
「…つうか、ここ俺の部屋なんだが」