10憶で始まった結婚は○○だった
 翌朝目を覚ましたファリサは、いつの間にかベッドで寝ていて驚いて飛び起きた。


 隣ではぐっすりと眠っているティケルがいて、ハッとなり自分の姿を確認したファリサは、ちゃんとパジャマを着ていて特に乱れた事もないのを確認するとホッとした。

 背を向けて眠っているティンケルを見て、ほっとしたものの、どこか複雑な気持ちが湧いて来た…。


 結婚して初めての夜。
 世間では結婚初夜であるが、ティンケルはやることがあると言って執務室にこもって遅くまで戻っては来なかった。
 いつの間にか眠ってしまったファリサを、ベッドの運んでくれたのはティンケルだろうが、背を向けて距離をあけて寝ている姿を見ると、やはり10憶で買われて来ただけなのだと痛感してしまう。

 買われてきただけだから、仲良くする気はないとサーチェラスに言ったファリサだが…この状態がこの先もずっと続くのかと思うと辛さを感じずにはいられない。

 選んだのは自分である事は承知している。
 それはそうなのだが…。


 背を向けたティケルを残したまま、ファリサはそっとベッドを出て寝室を出て行った。



 クローゼットから着替えを取り出したファリサは、地味なグレーのワンピースを選んだ。
 

 そのまま洗面所に向かうと、新しい歯磨きセットとタオルが用意されていた。

 歯ブラシはピンク色でコップも同じピンク色。
 タオルはフワフワで柔らかい素材で、白に赤い花柄模様。

 


 洗面を済ませたファリサが戻って来ると、ティケルが起きてきた。

 
 目と目が合うと、ファリサはなんとなく顔を合わせずらそうな目をしていた。


「おはよう。よく眠れたか? 」

 そう尋ねられ、ファリサは小さく頷いた。

「おはようございます。…よく、眠れたと思われます…」

「そうか。すまなかったな、昨夜はどうしてもやらなくてはならないことがあり。一人にさせてしまった」
「いえ、お気になさらず」

「今日は、ブッドルからお妃教育があるそうだ。色々と、お城の事も覚えてもらう必要がある。そんなに固くなる事はないが、ゆっくり覚えてくれればいい」

「はい。かしこまりました」

 あまり感情がこもらない言葉でファリサは答えた。

 お妃教育は本来なら結婚前に行われることであるが、結婚式まで会わないという条件だった為、結婚後に行われることになった。


 


 朝食を部屋に運んでもらい軽くすませたティケルとファリサ。

 軽くパン食で済ませた朝食。
 フンワリと柔らかいパンと焼きたての黒クロワッサン。
 温かいコーンスープに、オムレツとこんがり焼いてあるウィンナー。

 軽い朝食でも、コック長が朝から懸命に手作りしているだけあり、とても美味しい。



 食事中は特に会話がないティケルとファリサ。
 だがティンケルは、食べながらファリサの様子をチラッチラッと見ていた。



 朝食が終わると、ティンケルは溜まっている仕事をかたずけると言って執務室へこもってしまった。

 ファリサはブッドルよりお妃教育を受けるため、部屋で勉強になる。

 サーチェラスは公務のため外出した。


 それぞれの一日が始まる。
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