10憶で始まった結婚は○○だった
お妃教育を受けているファリサは、とても真剣に話を聞いている。
王室でのマナーや妃としてやるべき事など。
話を聞く姿勢が素直で、ファリサは覚えるのが早かった。
途中、ブッドルがファリサに得意な事を尋ねると小さい頃から唯一習っていたのがヴァイオリンであることを話してくれた。
それを聞いたブッドルは、さっそくヴァイオリンを用意してファリサに弾いてもらう事にした。
習っていたと言っても暫く弾いていないと言っていたファリサだが。
弾き始めると、とても優しい音色で心が和む音色を奏でてくれた。
その音色を聞くとブッドルは懐かしさを感じた。
ファリサのヴァイオリンの音色は、ティケルのいる執務室まで聞こえていた。
書類を書きながら音色に耳を傾けたティンケルは、手を止めて窓の外に目をやった。
「…変わらない優しい音色だ…。この音色に、どれだけ救われて来たか。…」
一息ついたティケルは立ち上がって、窓際に歩み寄った。
「俺が…護ってやれなかったから。きっと、人生狂わせちまったんだ…」
遠い目をしてギュッと唇を噛みしたティケルは、悔しそうな目をしている。
「…今度こそ、俺はお前の事を護るから。…嫌われていていもいい…俺の気持ちは、あの時からずっと変わっていないから…」
フイッと、机の上にある写真たてに目をやったティケル。
机の上に置いてある小さな写真たて。
写真に写っているのは幼い頃のティケル。
今の面影がちょっとだけ残った感じで、子供らしい可愛い笑顔。
お金持ちのお坊ちゃんのように、紺色のジャケットに紺色のスラックスを履いている。
どこかの学校の制服のようにも見える服装だ。
そして幼いティケルの隣には、小さな女の子が写っている。
片目を包帯で覆われちょっと痛々しい女の子は、綺麗なブロンドの髪が肩まで長く可愛いピンクのワンピースを着て、黒いオシャレな靴を履いている。
ティケルよりも年下の女の子のようだ。
2人で笑っている姿はとても幸せそうに見える。
「ファリサ…。お前の笑顔を、俺は取り戻してみせるから」
写真に向かってそう呟いたティケル。
写真の小さな女の子。
よく見ていると、どこかファリサに似ているような感じがする。
ティケルは小さな頃のファリサを知っているのだろうか?
小さな頃のファリサは、幸せにそうに笑っているよう見える。
だが今は、その笑顔の欠片もない…。
何かあったのだろうか?