10憶で始まった結婚は○○だった
誰かと一緒にお茶を飲む事が好きだと、サーチェラスは言っていた。
ミネルとも楽しそうにお茶を飲んでいたのを覚えている。
「先生。もしかして、先生も私を許せない1人なのですか? 」
「い…いいえ…そんな事はありません」
「許せないと思われていても、仕方がないと思います。私は、ミネルを不幸にしてしまったのですから」
「そんな事はありません」
「いいえ。ずっと、苦しめるばかりでした。…子供を授かることが出来なくて、ミネルはずっと責められていました。しかし、子供が授かれない原因はきっと…私にあったのだと思うのです」
え?
驚いた目をしてケインはサーチェラスを見つめた…。
「先生もご存じだと思いますが。私は、生まれつき心臓があまりよくありません。血筋の問題もありますが、それほど酷くはありませんが。きっと、私が弱いせいで子供を授かる事ができにくかったのだと思うのです。どうしても、子供が出来ない原因を女性のせいだとばかり思われがちですが。男性側にも、原因がある場合がある事は聞いています。私も、その一人だ思っているのです」
「そんな事はありません。検査を行った際に、お2人共何も問題はなかったのですから」
「それでも、自分を責めずにはいられませんでした。もっと、丈夫であれば良かったのにと。この25年の間、ずっとミネルを不幸にしたのは私だと責めて生きてきました。…あの子を見るまでは…ずっと…」
あの子と言ったサーチェラスは、とても愛しそうな目をしていた。
ずっと悲しそうな目をしていたサーチェラス。
誰とも再婚はしないと言って、一人で国を治めてきた。
何もかも一人で背負って…本音を話せる相手もいない…。
ずっと1人でいるという事は、今でもミネルの事を愛し続けているからなのだろう…。
サーチェラスを見ていたケインは、何となく辛くなってきた。
「お話がそれてしまいましたが。先生は、ミネルと親友でしたから。大切な親友を不幸にした男を許せないと思っておられると。そう感じております」
「私は、そのようなことは思っておりません。ただ私が、ずっと王室を避けていたのは。国王様のお辛そうな顔を見るのが、耐えられなかったからです。私には、何もしてあげる事はできませんから」
「そうでしたか。申し訳ございません。ご心配をおかけしていたのですね」
「いえ。…お気持ちは、とても分かりますので」
「もう、避けたりするのは辞めて下さいね。信頼している貴女が、王室の専属医師でいて欲しいのです」
「はい。今の国王様を見ていると、以前よりは穏やかなお顔に見えますので」
ちょっとだけ和らい表情のケインを見て、サーチェラスはそっと微笑んだ。
「先生。とりあえず、その器の中の物を調べてみて下さい。その結果、毒が入っているのを確認できましたら。その時は、ちゃんと教えて下さいね。本当の事を」
「とりあえず、仰られる通りお調べ致します。数日お時間を下さい」
「分かりました。結果が出ましたら、またご連絡下さい」
「分かりました」
とりあえず、器の中を調べてもらうことにして今日の所はお話を終える事にした。
ケインの反応から、ミネルが来ている可能性はとても高い事をサーチェラスは確信した。
何らかの理由があり、ずっと姿を隠しているのだろうと思った。