10憶で始まった結婚は○○だった
「なるほど、そうゆう事でしたか」
いつものニコっとした笑顔を浮かべながら、サーチェラスは空を見上げた。
「灯台下暗しとは、こうゆう事をいうのでしょうか…」
空を見上げたサーチェラスは悲しげな目をしている…。
どうやら先ほどのファリサ達の会話を聞いていたようだ。
偶然なのか…それとも?
お昼を過ぎた頃。
ぺリシアがファリサを連れてお城に戻ってきた。
ファリサが車から降りてくると、玄関からティケルが出てきた。
運転席から降りてきたぺリシアは、ティンケルを見て深く頭を下げた。
「皇子様、申し訳ございません。勝手に、ファリサ様を連れ出してしまいまして」
「いいえ、構いませんよ。そろそろ、お里帰りでもどうかと思っていたので。ずっとお城の中ばかりだったので丁度よかったです」
「そう言って頂けると、嬉しい限りでございます」
「もう用事は済みましたか? 」
「はい、もう終わりました」
「そうですか、では」
そっとファリサに歩み寄ったティケルは、ファリサの腕を掴んだ。
「今度は、俺とデートしてもらうよ」
「え? 」
デート? なにを言っているの?
ちょっとだけ驚いた目を向けたファリサを、そのまま連れて行ったティケル。
ぺリシアはそんな2人を見て、ちょっとホッとした目をしていた。
ティンケルはそのままファリサを中庭へ連れて来た。
ここにはお城の自慢である一年中バラが咲いている花壇がある。
部屋からも見えるくらい広く作ってある花壇には、今は白いバラと黄色いバラが咲いている。
ティケルに手を引かれて中庭に連れて来られたファリサは、綺麗に手入れしてある花壇を見て少し目を見開いた。
「初のデートが、お城の中庭と言うのも悪くないな。どこかに出かけても、騒がれるだけだし。ここなら静かに過ごせるから」
ギュッとファリサの手を握ったティケルは、そのまま花壇へ歩み寄って行った。
綺麗なバラの花が咲いている中。
片隅に珍しい紫色のバラが咲いているの目に入った。
「あ! 」
紫色のバラは目に入り、ティケルはファリサの手を引いて傍に行った。
「これは伝説のパープルローズだ。このバラを見た人は、永遠の幸せを約束されているんだぜ」
永遠の幸せ。
そう聞くと、ファリサの胸がチクリと痛んだ。
永遠の幸せなら私となんか見なくてもいいと思われ。
本当に好きな人と見た方がいいわけで。
なんで今日は手を握って来るのか、分からないわけで。
デートなんて言っているけど、どううゆう事なんだろうと思うのであって…。
「今日はここに来てよかった、何だかこのパープルローズに呼ばれたみたいだな」
「はぁ…。でしたら、私とではなく…他の人と見に来た方が良かったと思われます…」
ん? と、ティンケルはファリサを見た。
「このバラが、永遠の幸せを約束するバラであるなら。…私ではなく、本当に好きな人と見るのが良いと思うわけで…」
「何言ってんだ? お前。それじゃ俺が、お前に事を好きじゃないって聞こえるが。そう言いたいのか? 」
「その通りだと…思うわけで…。自分は…買われて来ただけであって…」
「あのなぁ。俺、お前の事が嫌いだなんて一度も言っていないだろう? 」
「それは、そうであって…」
「まぁ、好きだともまだ言っていないからな」
「確かにそうであるわけで…」
ギュッと握っていた手を引き寄せ、ティケルはファリサをそっと抱きしめた。
突然抱きしめられ、何故こんな展開になるのかとファリサは驚くばかりで固まってしまった。
離れなくてはいけないと思う気持ちはあるが、何故かティケルの腕の中は心地よく感じた。