10憶で始まった結婚は○○だった
 抱きしめている腕はぎこちない感じがするが、触れられた感覚がどこか覚えがあるような気がした。
 
「…もうそろそろ、許してくれないか? 俺が、お前の事を愛する事を」

 はぁ? 
 愛する事って?
 お金で買っただけでしょう?

 戸惑いながらそう思ったファリサ。


「お前、俺がお金で買ったと思っているようだが。別に、お金なんて本当はどうでもいいんだ。…俺はお前の事がずっと…好きだから…」

 ずっと? どうゆう事?
 私を前からしているような事言っている…なんで? 


「俺はお目から離れる気はない。結婚式で誓った通り、生涯ずっと一緒にいると決めている。だから、そろそろ許してほしい。俺がお前の事を愛する事を」

 
 わけわかんない…。
 でも…嫌なじゃ気持ちが湧いてくるのはどうして?

 ファリサは分からない気持ちに混乱していた。


「今日はお前とパープルローズを見れて嬉しい。今度は、一緒に外出してもらえると嬉しいなぁ。俺、お前の事を誰に見せても恥ずかしくないって思っているから」

 こんな私を?
 恥ずかしくないって思っているの?

 嬉しい気持ちが込みあがってくる中、ファリサは何故か甘えてはいけないと思った。

 
 少し冷たい風が吹いてきた。

「ちょっと寒い風が吹いてきた。さっ、中に戻ろう」

 ティケルに手を引かれ、ファリサはお城の中に戻っていた。


 広い中庭からお城の中に戻る距離は歩いていると、わりと長くある。
 その距離をティケルはしっかりファリサの手を握ってくれている。

 
 複雑な気持ちのままファリサはティンケルと一緒に歩いて行った。





 ファリサがティケルとお城の中に戻って来ると。

「皇子様! 」

 ブッドルが血相を変えて駆け寄て来た。

「どうした? ブッドル」
「はい。実は…」

 ブッドルはティケルの耳元でコソコソと何か話し始めた。

「はぁ? なんだ? それは」
「私も驚いている次第でございます」

「そうか。とりあえず、俺が話してくる。すまないがファリサを頼む」
「畏まりました」

 そのまま歩いてゆくティンケルを、ファリサはじっと見ていた。

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