10憶で始まった結婚は○○だった
「その秘密をばらされたくなければ、早めにこの国から出て行く事をすすめる」
「この国を出て行く? 何故私が? 」
「俺の知っている秘密を知られれば、あんたは間違いなく死刑だ」
「はぁ? なにを言っているのです? 皇子様。私が何をしたというのです? 」
「いずれ判る。とにかく、今後一切城に出入りを禁じる! 」
「そんな酷い事言わないで下さいよ皇子様。私は、ファリサの母親ですよ。母親の私が、何故お城に来てはいけないのです? 娘のファリサが王室に嫁いだなら、私だって家族の一員ですよ」
「あんたがファリサの母親である、その証拠はない」
「証拠? 」
「こちらには、ファリサには父親しかいないと知らされている。どうしても、あんたがファリサの母親だと言い張るなら。ここに、ぺリシアさんを呼んで確かめる。それでもいいのか? 」
ぺリシアの名前を出されると、ウィーヌは黙てしまった。
言い訳を探しながらふとサロンの入り口を見たウィーヌは、ファリサがいるのが目に入った。
「ファリサ! 」
ファリサを見たウィーヌはわざとらしい笑みを浮かべながら、歩み寄て行った。
「ファリサ、久しぶりね。元気だった? 心配したのよ。結婚式にも呼んでくれないなんて、どうしてよ? 私は母親よ、娘門出くらいお祝いしたいじゃないの」
気持ち悪い笑みを浮かべているウィーヌに、ファリサは冷たい眼差しを向けた。
「…なに言ってるの? 誰が母親? 」
低いトーンの声で言われ、ウィーヌの表情がピクっと怯んだ。
「あんたは母親じゃない」
「ど、どうしたの? ファリサ。何を言い出すの? 」
「…あんたは…私の事を誘拐してきただけ…」
「な、なに言っているの? 私は母親よ、誘拐なんてしてないわ」
「違う…あんたなんか…」
ギュッと拳を握りしめ、ファリサは震えだしてしまった。
震えが増してきて立っていられなくなりそうになったファリサは、自分の肩を抱いた。
そんなファリサをふわりと、後ろから抱きしめる暖かい腕が包み込んでくれた。
ハッとなりファリサが振り向くと。
そこにはサーチェラスがいた。
「こ・国王様…」
驚くファリサに、サーチェラスは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ、心配しなくていいですから」
そう言ったサーチェラスは、厳しい目でウィーヌを見た。
ウィーヌはそんなサーチェラスに愛想笑いを浮かべた。
「国王様、随分とご無沙汰しております。この度は、娘のファリサが皇子様と結婚したと聞きましたので会いに来ましたの」
「貴女がファリサの母親ですか? 」
「はい、ずっとファリサを育ててきました。将来は、皇子様と結婚して欲しいと願っておりましたので。今回の事は、大変嬉しい次第でございます」
サーチェラスは軽く笑いを浮かべた。