10憶で始まった結婚は○○だった
 翌日。
 カーテンから差し込む朝日の光で目を覚ましたファリサ。

 何も着ていない自分を見て、昨夜の事を思い出すと少しだけ赤くなった。

 隣を見ると、ティンケルはもういなかった。

 もしかして…夢だったのだろうか?
 そう思ったファリサ。

 だが体の奥の方で、確かに感じるものがあった。
 ずっと殻に閉じこもっていたファリサ。
 こんな気持ちは初めてで…でも…遠い昔にどこかで同じ感覚を感じたような気がするのは何故だろう?


 そんな事を思いながら身支度を整えたファリサ。


 時刻は7時を過ぎていた。

 ティンケルは早くから外出の為、出掛けてしまったようだ。


 
 一人でゆっくり朝食を食べたファリサ。


 

 朝食を済ませた後、ファリサは一人中庭へやって来た。

 もう一度あのパープルローズを見てみたいと思ったファリサだが。

 その場所に行ってみると、誰かが掘り起こして持って行ったのかパープルローズはもうなかった。

 
 ちょっと残念な気持ちになったファリサ。

 すると…。


「ねぇ、皇子様は今日もお一人でお出かけになったの? 」
「そうよ、公務なのに一人で行くなんて。よっぽど、ファリサ様の事嫌がっているんじゃない? 」
「あー、分かるその気持ち。だって、ファリサ様ってなんか気持ち悪いもの」

 ちょっと離れた場所で庭掃除をしている使用人が3人で集まって、掃除をしながらファリサの悪口を言っているのが聞こえてきた。

「皇子様もどうして、あんな人と結婚したのかしら? 」
「本当に! 眼帯で片目隠しているなんて、みっともないわよね」
「そうそう。あれって、傷隠しのためかな? 」

「さぁ。でも目に傷を負っていて、よく皇子様と結婚できたわよね」
「なんでも結婚式まで会わなくて、写真も見せられなかったってきいているわよ」
「あの顔じゃみせれないわよ。オマケに暗いし」

「あの腕利きの弁護士ぺリシアさんの子供らしいけど」
「ぺリシアさんの七光りで、弁護士やっていたようね」
「あの顔で弁護士? もしかして国選弁護人だったりするの? 」

「犯罪者の弁護なら、顔なんて関係ないからね」
「やれやれ、皇子様。もしかしてそのうち、浮気でもするんじゃないかしら? 」
「案外もう他に作っているんじゃない? 」

 
 ファリサの悪口で盛り上がっている3人の使用人達。
 年増の女性だが、人の悪口が好きそうな顔をしている。


 聞こえてきたファリサは、言われて当然だと思う気持ちもあるが、実際に悪口を聞いて気分が良いものではない。

 ティンケルが浮気…。
 そうなっても自分は文句は言えない…。

 悲しい気持ちと悔しい気持ちが込みあがってきたファリサは、溢れそうな涙をグッとこらえた。
< 31 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop