１０憶で始まった結婚は○○だった

　移動中。
　サーチェラスはずっとファリサの傷口を上着て押さえていた。

　ぐったりしているファリサの手を握っているサーチェラス。

　ファリサは意識が朦朧とする中、手から伝わる暖かいエネルギーを感じていた。





　国立病院に着いたファリサは、ケインが駆けつけてきてすぐに処置が行われた。


　サーチェラスは手術室の前で終わるのを待っていた。


　暫くすると、中からケインが出てきた。


「先生、どうかしたのですか？　」
「いえ…輸血が必要で…」

「輸血ですか？　」
「はい…」

　困った顔をしているケイン…。

「輸血なら、私の血を使って下さい」
「え？　そ、それは…」

「何を言っているのですか？　ファリサの血液型、もしかしてRHーAB型ではありませんか？　」
「あ…はい…」

「それなら私の血を使って下さい。同じ血液型ですから」


　そう言われてもケインは迷った顔をしていた。

「迷っている暇はないはずです。この血液型は、グリーンピアトには珍しく王家の血筋の者しかいません。早く採って下さい、私の血を。全部採っても構いませんから」

「分かりました…こちらにお願いします」


　サーチェラスはケインと一緒に手術室へ入って行った。


　RH-AB型。
　この血液型は何万人に一人と言われていて、グリーンピアトには王家の血族しかいないと言われている。

　探しても時間がかかってしまうくらい少ない。




　しばらくして。

　サーチェラスが輸血をしたおかげで、ファリサは無事に助かった。
　思ったより出血が酷かったようだ。

　頭の他は、右腕を強く打っているが他のには別状はなく骨折もしていない。

　頭の怪我なので1週間ほど入院する事になった。



　王室専用の特別室が病院の最上階にある。
　まるでホテルのような広い空間に、広くフカフカなベッドが置いてあり、小さなキッチンスペースまである。
　小さめの冷蔵庫に移動できる机と高級ソファー。

　窓には爽やかなブルーのカーテン。

　ちょっとしたリゾート気分も味わえるような病室。



　眠っているファリサの傍についているサーチェラス。

　左目を眼帯で覆い、頭に包帯を巻いているファリサは何だか重病人のように見える。

　ケインからは、もう心配いらないと言われている。
　

　サーチェラスはそっと、ファリサの頭に触れた。

「すまなかったな、痛い思いをさせてしまった」

　
　ファリサの頭に触れ、そっと目を閉じたサーチェラス。

　すると…。


　暗闇の中にポツンと立っている小さな女の子が見えてきた。
　その女の子は今のファリサと同じように、左目に眼帯をあてているが、綺麗なブロンドの長い髪を頭のてっぺんからみつあみで結っていて子供らしい可愛いピンクのワンピースを着ている。

　立っている女の子は優しい目をして、じっと何かを見つめている。

　しかし。
　そんな女の子に歩み寄る黒い影が！


　黒い影は女の子を無理やり連れて行った。
　そして冷たい闇の中に閉じ込めてしまった。

　優しく微笑んでいた女の子は泣きじゃくり、助けを求めているが黒い影が激しく怒鳴りつけている。
　泣き止まない女の子を黒い影は殴りつけ、鞭のようなもので女の子を何度も殴り続けている。


　震えている女の子はずっと泣いている…。

　泣き続けて…
　そのうち泣く事も忘れてしまうくらいで…。

　大きくなった女の子は古い地味な服を着せられ、広いお屋敷のような部屋を掃除させられたり、食事の支度をさせられたりとまるで使用人のように扱われている。


　黒い影はキラキラと光るアクセサリーを沢山つけている。
　
　食事が気に入らないと、女の子に皿を投げつけものすごい剣幕て怒鳴りつけている。


　時は寒い冬の中、薄着のままの女の子を外に放り出して一晩中放置している。


　寒さで凍えそうな女の子…。