10憶で始まった結婚は○○だった
「安心しろ。お前の悪口を言っていた使用人は辞めてもらったから」
やめさせた? どうして?
驚きを隠してファリサは視線を落とした。
「大切な人の悪口を言う人に、働いてもらいたくはないからな。他の使用人も聞いていたようだ、酷い事ばか言っているのを聞いて腹が立ったようで、俺に直接言ってきたよ。あんな人達は、お城に来てほしくないってな」
そんな事を言ってくれる人がいるなんて…。
みんな私の事なんて、快く思っていないって思い込んでいたのに。
「みんなお前の事を歓迎してくれているよ。だから、何かあれば俺に言ってくればいい」
ゆっくりと、ファリサはティンケルを見つめた…。
「あの…聞いてもよろしいでしょうか? 」
「ん? どうした? 」
「どうして、こんな自分に優しくしてくれるのですか? あんなに、むちゃくちゃな条件を出して結婚式まで会わないなんて言ったのに…。全く知らない自分の事、どうしてそんなに優しくしてくれるのですか? 」
やれやれ、もしかしてすっかり忘れているのか?
まぁ仕方ないか、色々大変だったからな。
そう思ったティンケル。
「…俺、お前と初めて会ったわけじゃないと思う」
え? どうゆう事?
見つめているファリサの目がちょっと見開かれた。
「お前と結婚式で初めて会った時、やっと本当の自分に戻れた気がしたから。…お前の事、護りたいって思えたから。…」
「こんな自分の事を? 」
「お前、あのウィーヌに無理やり連れて来られたって言っていただろう? 」
「はい…」
「それって、ウィーヌに誘拐されたって事だろう? 」
「そうだと思われ…」
「俺、その誘拐事件の事を良く知っている。俺の両親も、その件である事を目撃したことで殺されたようなものだから」
殺された? どうゆう事?
「ウィーヌがお前を誘拐して、人生が大きく変わった人が2人いる。そのうちの一人が俺だ。…俺の両親は、お前が誘拐され連れて行かれる所を見ていたんだ。その事を警察に証言した。そうしたら、その翌日に家に火をつけられ俺の両親は家ごと焼き殺された。俺は学校に行っていたから助かった。…だが、それがきっかけで俺は全てを奪われ、児童施設に送られて自由が奪われた。何もできない非力な自分に、ずっと悔しさを覚えていたよ。…大切な人との約束も、果たせなくなってしまったからな…」
悲しそうなティンケルの横顔を見ていると…。
(俺、お前の事ずっと護るから。だから、俺の傍から離れたりするな)
まだ小学生くらいの男の子が小さなファリサに言った。
その男の子は…
小さい頃のティンケル。
(うん、ずっと傍にいるよ。だって私、ティンケル君が大好きだもん)
無邪気なファリサが言った。
子供の頃。
まだファリサが5歳の時。
ティケルとファリサは近くに住んでいて、とても仲良しだった。
ティンケルは貴族の子供で、身なりが良くいつも高級なキレで作られた服を着ていた。
ファリサはあまり裕福ではなく、いつもちょっと古い服を着ていた
そんなファリサとティンケルが出会ってしまったのは…。
ファリサはそっと左目の触れた。
そんなファリサを見て、ティンケルは傍にきて、そっと抱きしめた。
ハッとなったファリサは、すぐにティケルを振り払おうとした。
だがギュッと抱きしめられてしまった。
「もう離れないでくれよ、やっと見つけたのに…。また居なくなろうとするな! 」
やっと見つけた?
まさか…探してくれていたの?