10憶で始まった結婚は○○だった
縁談を計画したのはぺリシアだった。
10憶を渡す事で、写真も見せない結婚式まで会わない条件で縁談を申し込むと。
ファリサは初めは無理だと言っていた。
だが、ぺリシアはファリサに幸せになってほしいと話してきた。
ぺリシアの想いを聞いて、ファリサは遠い昔にティンケルと「ずっと一緒にいよう」と約束した事を思い出した。
もし、この縁談が成立したらその約束が果たせるだろう…。
でもきっと、皇子様になったティンケルは自分の事なんて忘れているに違いない…。
そう思ったファリサ。
少し考えさせてほしいとぺリシアに言ったファリサ。
そんな時、ケインとセレンヌが25年前の火事の話しているのを偶然聞いてしまったファリサ。
「国王様。また貴女が生きているんじゃないかって、聞いて来たわよ」
「え? まだそんな事を言っているの? もう25年じゃない」
「国王様は、今でも貴女が生きているって信じているのよ。あの火事で、あなたは亡くなった事になっているけど。国王様だけは、ずっと生きているって信じていようね」
「…私はあの火事で死んでいるの。…だって…私が死んで、私の受け継いだ資産が全部王室に受け継がれているんだもの。それで助かったのだから、もういいの」
「そうね。あの時の王室は、かなりの赤字で大変だったから。貴女の受け継いだ資産総額はかなり助かったわね」
「こんなに長い間見つからないのに…早く忘れてくれたらいいのに…」
院長室のドアの外で、偶然2人の会話を聞いてしまったファリサ。
2人の会話を聞いたファリサは、ウィーヌに監禁されていた時に言われた言葉を思いだした。
(あんたは大切な道具だから、殺しはしないわ。あんたは、皇子と結婚してもらうわ。そして、あの多額な資産を私に渡してもらうわ。王妃が火事で死んで、国王様は王妃が残した多額な資産を受け継いでいるって聞いているの。赤字だった王室に、多額な資産を受け継いだ女が嫁いできて。結局殺されたようなものだわ。王妃の残した多額な資産で、王室の財政は持ち直したものだからねぇ)
酷い暴力を受けながら、ファリサはよくその言葉を聞かれていた。
皇子と結婚して多額な資産を渡してもらうと…。
ケインとセレンヌの話しを聞いて、ウィーヌが言っていたことが本当の事だったと確信したファリサ。
セレンヌはファリサには実の父親が、サーチェラスである事は話していた。
火事で火傷を負って会えなくなってしまったと言っていたセレンヌ。
サーチェラスに会いたくなったら、いつでも正直に言ってくれて構わないと言っていた。
だがファリサは何となく、セレンヌの傍にいなくてはならないと思っていた事からサーチェラスに会いたいとは言い出せなかった。
セレンヌが受け継いだ多額の資産を狙って、故意的に火事を起こして殺したとしたら…。
ウィーヌが言う通りだったとしたら…。
サーチェラスはセレンヌを殺そうとしたのだろう。
火災が起こったのはお城の馬小屋だと聞いている。
馬小屋くらいなら、燃えても何も支障はないだろう。
今でもお城で暮らしているサーチェラスは、セレンヌから受け継いだ多額の資産でやりたい放題なのかもしれない…。
そう思ったファリサは、今まで抑えていた怒りが込みあがって来るのを感じた。
「おじさま。皇子様への縁談のお話し、進めて下さい」
しばらく待ってくれと言っていたファリサが、ぺリシアにそう言った。
「いいのか? 本当に」
ぺリシアはちょっと驚いた目をしていたが、ファリサは強く頷いた。
「はい。ただ、結婚式まで会わない、写真も見せないという条件を受け入れてくれるかどうかは分かりませんので。縁談が成立するかどうかは、分かりませんが」
「分かったよ。それじゃあ、皇子様に縁談の話を送っておくよ。後は、どう返事が来るか待つ事にしょう」