10憶で始まった結婚は○○だった
 スッとファリサの頬に涙が伝った…。
 その涙を見るとサーチェラスの胸が、ズキンと痛んだ。

「…ごめんなさい。…私が…勝手に思い込んでいたと思われます。…」
「ファリサ…」

 ギュッとファリサを抱きしめたサーチェラス。

「謝る事はありません。謝るのは、私の方です…。貴女が辛い時に、何もしてあげられなかったのですから…」

 ファリサはそっと首を振った。

「…お母さんはずっと、お父さんは素敵な人だと言っていたわけで。…幸せだったと言っていたから…」
「そんな事を言ってくれていたのですか? 嬉しいです」

「国王様がずっと、一人でいるのは。お母さんの事を、ずっと愛しているからだって…判っていたと思われます。…でも…誰かを憎まないと…生きて行けなくて…」
「もいいです。そう気づいたなら、もう過去は癒されています。今を見て下さい。そしてこれからの未来を、見て下さい」

 抱きしめてくれるサーチェラスの腕の中は、とても暖かくファリサの心を穏やかにしてくれる…。
 そのぬくもりを感じるとファリサは、セレンヌの事を深く愛してくれている事を感じた。

 
 涙が溢れてきて止まらないファリサを、サーチェラスはそっと抱きしめていた。



 しばらくの間、ファリサは泣いていた。
 泣くだけ泣くとスッキリしたようで、気持ちが楽になったファリサはそのまま眠ってしまった。


 眠ってしまったファリサをベッドに運んだサーチェラスは、やっと肩の荷がおりたようなきがした。

「有難うございますミネル。こんなに素敵な子を産んでくれて」

 ファリサの寝顔を見てサーチェラスは嬉しそうに微笑んだ。

その後、外出から帰ったティンケルがサーチェラスの部屋にやって来た。

 いきさつを聞いたティンケルは怒りが込みあがっていた。

 サーチェラスは、だいたいの証拠は掴んでいるから後は警察に任せるのがいいと言ってティケルの怒りを宥めた。

 今日はもう寝てしまったファリサ。
 話は明日ゆっくりするといいとサーチェラスが言うと、素直にそうすると言ったティンケル。



 その晩はファリサの傍で眠ったサーチェラス。

 ファリサは少し穏やかな寝顔になっていた。
 素直な気持ちになった事で、表情も穏やかになったようだ。
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