10憶で始まった結婚は○○だった

「ファリサ様は、とてもお優しい方なのでございますね。初めてお顔を拝見した時からずっと思っておりました。ファリサ様は、お若い頃の国王様にとても良く似ていらっしゃると思いましたよ」
「国王様に? 自分が? 」

「ええ。目元なんて本当にそっくりで、ちょっとした仕草も似れおられるのでびっくりしました。でも、よく見ていると無くなれた王妃様にも似ていらっしゃいますので。私はもしかして、ファリサ様は国王様のお子様なのかと錯覚しそうでした」
「…なにを言っているのですか? こんな自分が…そんなわけないじゃないですか…」

 フイッと悲しげな目をして、ファリサはバラに目をやった。

「ファリサ様。私は長年、このお城に仕えております。色々なご事情は、全て見てきております。…私は、ミネル様が亡くなったなんて信じていません。きっとどこかで生きておられるとずっと信じておりました。私のもい過ごしでも構いません。ファリサ様は、国王様とミネル様の血を引いておられると私は思っているのです。皇子様とご結婚されたのも、きっと、神様のお導きです。みんなファリサ様を歓迎しておりますので。これからは、どうか安心してお暮らし下さい。ファリサ様が、心地よくお過ごしになられるように私も精一杯配慮させて頂きますので」

 
 こんな自分の事を歓迎してくれているの?
 このお城の人って…こんなに優しい人ばかりなの?

 嬉しい気落ちが込みあがってきてファリサは何も言えなくなってしまった。

「あれ? どうかしたのか? 」

 ティンケルがやって来た。

「皇子様。いえ、ファリサ様に使用人が無礼な事をしてしまいましたのでお詫びを申し上げておりました」
「そうだったのか」

 ファリサの傍に歩み寄ったティンケルは、そっと手を握った。
 ハッとなり、ファリサはティンケルを見た。

 大丈夫だよと、ティンケルはそっと微笑んでくれた。
 その微笑みが嬉しいのに、ファリサはまだ素直になれなかった。


 ティケルとファリサの姿を見て、キウリは嬉しそうに微笑んでいた。

「まるで…昔の国王様とミネル様を見ているようで…懐かしいですね…」


 暖かい太陽がティンケルとファリサを包んでくれている。

 黄色いバラが祝福してくれているようにも見えた。
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