10憶で始まった結婚は○○だった
 遠い目をしたウィーヌは、目を泳がせながら思い出していた。

 12年間の間、ファリサを監禁していた時の事を…。


 ウィーヌはお金持ちの貴族の家に育った。
 しかし親や兄弟に比べてウィーヌだけが才能がないと言われていた。
 音楽祭に出ても一度も賞を受賞したことがなく、周りはウィーヌが貴族の娘であるが故に褒め称えるだけで影では出来損ないと言っていた。


 ずっとコンプレックスの塊で生きてきたウィーヌが、唯一自慢できたのは当時皇子であったサーチェラの許嫁だった事だけ。
 サーチェラスの父とウィーヌの父親が学友だったことから、娘を皇子様の妃にと口約束をしていたようで幼い頃からウィーヌは「皇子様と結婚するの」とそれだけを自慢してきた。

 だが事実は違っており、そんな口約束は忘れ去られていた。
 結局サーチェラスが選んだのは、北グリーンピアトの医師で資産家の娘であるミネルだった。

 資産家と言うだけでただの平民。
 ミネルの家族は両親は病死していて、兄が一人いるが家を出て消息が分からないと言われていた。
 ミネルが一人で家を護ってきた状態で、資産がある以外はそれほど取柄もないただの医師で、サーチェラスよりも年上だった。

 そんなミネルに許嫁を奪われ、ウィーヌは悔しさを通し越して憎悪に変わっていた。

 サーチェラスがミネルと結婚すると同じくらいに、他の貴族と結婚したウィーヌ。
 金融関係の仕事をしている家系で、かなりの財産家の家に嫁いだウィーヌはわがまま放題だった。
 すぐに子供も授かり、後継ぎである男の子が産まれ安泰だと言われていた。

 だが。
 子供が産まれてからウィーヌは、お城によく行くようになった。
 産まれた子供を見せたいと言って毎日のように、お城に言っていたウィーヌ。
 そんなウィーヌを見ていた夫はお城に行くのをやめるように注意した。
 
 それから間もなくして夫の体調が悪くなってきた。
 原因は分からないが、食欲が減り体調を崩すことが多くなった。
 病院で調べても疲労と診断されていた事から、仕事を減らして家で静養する日々も多くなった。

 そんな中でお城で火災が起こり、馬小屋が火事になり、それに巻き込まれてミネルが亡くなったと報道された。

 ウィーヌはその報道に不敵な笑みを浮かべていた。

 それから間もなくして、ウィーヌの夫は急死した。
 死因は心不全だった。

 夫が亡くなりウィーヌは多額の財産を受け継いだ。
 一生遊んで暮らせるだけのお金を手に入れたウィーヌは、再びお城へ行くようになった。

 夫を亡くした悲しみは、サーチェラスがミネルを亡くした悲しみと同じだと言って、サーチェラスの両親に泣きついていた。

 だが次第にお城には来ないように言われた。
 最後にお城に行ったとき、ウィーヌはサーチェラスの両親にお菓子を持って行った。

 今までお世話になったお礼だと言って。


 それを食べてから間もなくして、サーチェラスの両親は急死した。
 死因は心不全だった。

 サーチェラスが孤独になり、悲しみのどん底だと思ったウィーヌは再びお城に出入りしようと近づいたが出入り禁止を解いてもらえなかった。


 それでも諦めがつかなかったウィーヌ。


 そんな時だった。

 子供が怪我をして病院に行ったとき。

 偶然見かけたファリサがいた。

 左目を眼帯で覆い、ちょっと痛々しいファリサを見たウィーヌはどこかサーチェラスに似ている事に気づいた。
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