10憶で始まった結婚は○○だった
始まりはあの火事から…
 考えこみながら自分の部屋に戻ってきたサーチェラスは、そのまま机に歩み寄りドサッと椅子に座った。


 お城の4階にあるサーチェラスの部屋は、広くゆったりとした空間が広がる南向きの部屋。

 机と椅子と本棚。
 そしてクローゼットと中央にくつろげるソファーとテーブルが置いてある。

 カーテンは爽やかなブルー系で、広い窓からは城下町が見下ろせるくらいだ。

 寝室は別になっていて、左側の奥に用意してあるようだ。


 フーッと一息ついたサーチェラスは、机の引き出しを開けた。

 一番上の鍵付きの細い引き出し。
 そこには写真が入っている。

 若かれし頃のサーチェラス。
 結婚式の写真のようで、シルバーのモーニングに身を包んでいるサーチェラスが幸せいっぱいの笑顔で笑っている。
 爽やかな笑顔で写っている若かれし頃のサーチェラスは、どこかファリサに似ている感じがある。

 そのサーチェラスの隣には、女神のように美しくブロンドの長い髪を綺麗にアップに結って純白の妖精のようなふんわりしたウェディングドレスに身を包んだ女性が写っている。

 綺麗な肌をしていて、肩なしドレスがとてもよく似合っている。
 首元にはダイヤのチョーカーが輝いている。
 笑っている目から見える瞳は綺麗な紫色。

 髪の色と顔立ちを見ているとファリサにそっくりに見える女性。


「ミネル…。驚きましたよ、貴女にそっくりな人がティケルの妃として来てくれましたから」

 写真を見つめてサーチェラスが呟いたミネルと言う女性。

 この女性は、サーチェラスの妃として25年前に北グリーンピアトから嫁いできた平民で資産家の家の娘ミネル。
 北グリーンピアトで腕利きの医師として、総合病院に勤務していたが、サーチェラスが怪我をして運ばれた時に担当したくれた事がきっかけで、サーチェラスが一目ぼれして求婚を申し込んだのだ。

 サーチェラスより5歳年上で、身分も違うと言ってずっと断っていたミネル。
 北グリーンピアトはグリーンピアトとは、一番距離が離れていて連絡船も月に2度ほどしか通っていないほど情報も乏しい所。
 冬になると凍り付いて連絡船も通らなくなってしまうほどで、遠距離恋愛にしてもちょっと無理がある距離だった。

 しかし、ミネルの医師としての腕を買われグリーンピアト国立病院が是非勤務して欲しいと言って引き抜いて来た。

 サーチェラスが求婚してから2年後だった。
 
 国立病院に来たミネルに再会したサーチェラスは当時24歳だった。
 ずっと諦めることが出来ず、なんとかミネルに会いたいと願っていたサーチェラスは、何度もミネルに会いに行ったが、ミネルは頑なに断るばかりだった。

 それから1年にわたりサーチェラスがアプローチを続け、ようやく結婚できたのだ。

 サーチェラス25歳。
 ミネル30歳の時だった。

 年上だなんて感じさせないミネルは、国民からも評判が良く平民から王家に初めて妃が来たと大喜びされていた。


 そんなミネルも。
 結婚して5年後に馬小屋で焼死してしまった。
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