貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
そして、また夜がやってきた
アローナは寝台の上で膝を抱えていた。
また夜が来てしまったようだ。
今夜はどうすれば、と思った瞬間、いきなり扉が開いて、ジンが入ってくる。
「今日はどうした。
なにか考えついたか、アサギマダラ」
それ、私の名前じゃありません、と思いながら、アローナは寝台の上から、すがるようにジンを見た。
「それがなにも思いつかないんですよ~。
考えてください、ジン様」
「……俺がか」
意味がわからんが、と言いながら、ジンは寝台に腰掛ける。
ジンの重みで少し寝台が軋んで下がっただけで、なんとなく強張ってしまう。
そんなアローナを見て、ジンが笑った。
「まあ、長い人生を共にするのだ。
初夜が数日遅れたからと言って、どうということもあるまい」
待って数日、という宣言にも聞こえるな、とアローナは思った。
でも、とジンを見上げる。
長い人生を共にする、か。
そう言い切られると、なんだかちょっと照れてしまうのだが……。
そうアローナが思ったとき、ジンが笑った。