貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「何故、笑うんです?」
と訊くと、ジンは、

「お前が笑ったからだ」
と言う。

 笑いましたか? 今、私。

 自覚はなかったのだが、ジンは微笑み、アローナを見つめてくる。

「なかなか式ができなくてすまんな。
 もう少し国が落ち着かないとな。

 追いやった父も相変わらずだし」

 は、はあ、と言いながら、見つめないでくださいっ、そんな間近でっ、と逃げ腰になるアローナにジンは訊いてきた。

「ところで、何故お前は、そんなに往生際悪く抵抗しようとするのだ。
 国に誰か好きな男でもいたのか」
「いいえ」

「ならば、私が好みの男ではないのか」
「いいえ」

 ジンは沈黙した。

「……お前が私に抵抗する、その理由はなんだ?」
「なんなんでしょうね……?」

 そういえばない。
 よく考えれば、抵抗する理由など何処にもなかった。

 美しい瞳と髪に、厚い胸板。
 若さと知性溢れる美貌。

「想像していた未来と違いすぎて、ついていけてないだけなのかもしれません」
とアローナは素直に胸の内を吐露する。
< 102 / 290 >

この作品をシェア

pagetop