貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
 幾重にも重ねられた枕に背を預けたジンは目を閉じ、言う。

「死ぬまでには全部読みたいかなと思うんだが。
 年々、本は増えていくからな。

 人生、三回くらいやったら、全部読めるかもな」

「人生三回ですか」
とアローナは呟いた。

 今生では長い人生を共にしようと言われたが、生まれ変わったら、きっと一緒じゃないんだろうな。

 仕方なくもらった人質の花嫁だもんな。

 そう思いながら、アローナはジンの顔を見る。

 そのまま黙っているジンに、寝てしまったのだろうかな、とアローナは思った。

 お疲れだもんな、とアローナはジンの身体に夜具をかけてやる。

 ……それはいいんだが、私は何処で寝ればいいんだろう?

 アローナは周囲を見回した。

 長椅子で寝るという手もあるが、装飾激しい椅子は寝心地はよくなさそうだ。
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