貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 どうやら、自分が寝ていると思ったようだ。

 アローナの様子にそう思いながら、ジンが目を閉じていると、アローナはそっと夜具をかけてくれた。

 寝台の端に行き、眠ることにしたようだ。

 ……襲われるぞ、いいのか?
とジンは片目を開けてその様子を窺う。

 アローナはちょっとゴソゴソしていたが、すぐに寝息を立て始めた。

 早いな、と少呆れながら、ジンは起き上がる。

 反対側を向いて眠っているアローナの顔を覗き込んでみた。

 なんの夢を見ているのか、アローナは笑って寝ている。

 父は暇なので、戦をすると言っていた。

 いずれお前にもわかる。
 王というのは暇なものなのだと。

 衣食住の心配をすることのない地位にいると、戦でもしてみようかという気になるのだと。

 父上。

 あなたのような王にはなるまい。
 ずっとそう思い、生きてきましたが。

 私の中に流れるあなたの血が不安でした。

 でも、今なら断言できます。

 私は絶対にあなたのように、暇だからといって、(いくさ)をするような王にはならないでしょう。
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