貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~





 しばらくして、ジンがそっとアローナの寝室を出ていくと、フェルナンが、あっ、出てきたっ、という顔をする。

「おやすみなさい、のあと、静かになって出ていらっしゃらないので、今宵こそはと思ったんですが」
とフェルナンは言い出す。

 その今宵こそは、な事態が起きた方がいいのか、起きない方がいいのかわからない口調だった。

 フェルナンはアローナが妃になることをどう思っているのだろうか?

 最初は、遥々(はるばる)アッサンドラからやって来られるアローナ姫を正妃に、と思っていたようだが。

 この困った貢ぎ物の娘がそのアローナ姫だとわかってからはどうなのか、と思いながら、ジンは言った。

「アローナは眠ってしまった。
 襲うのは簡単だが。

 まあ、もう少し様子を見よう」

 フェルナンは遠慮なく、ちょっと鼻で笑うような顔をしたあとで、
「そんなこと言ってるうちに、誰かに、ひょいと持って行かれたりしないといいですね~」
と言って、行ってしまった。



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