貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 アハトはアローナの腕前を聞き及んでいるようだった。

「お、おやめくださいっ、アローナ様。
 それだけはっ」

「カーヌーンを」

「おやめくださいっ」
と芸妓たちにカーヌーンを持って来させようとするアローナをアハトが止める。

「では、アハト様、お弾きくださいますか?」

「……弾けるわけないであろう」
とアハトは敬語を崩して強気に言ってくる。

 芸妓(げいぎ)たちも異国の楽器であるカーヌーンは弾けないようだった。

「シャナがいないと不便ですね」
と言いながら、アローナは自分でカーヌーンで伴奏しながら、調味料の歌を歌う。

 しかし、なにぶんにも不器用なので、歌ったあとで、伴奏。

 歌ったあとで伴奏、と言った感じになり、同時にはできない。

 何度も歌の合間にロバが踏み殺されたあとで、アローナは礼をし、演奏の終わりを告げる。

 レオは頷き、手を叩いて言った。

「うむ、素晴らしいな。
 今回はその腕前に免じて、ジンに手出しするのは勘弁してやろう」

 アハトが、ええ~? 正気ですか? レオ様、という顔をしていた。
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