貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「いや、なかなかすごい演奏であったぞ。
 あんなものを人前で平気で演奏するとは。

 しかも、夫の命がかかった切羽詰まったこの状況で。

 この娘、並の神経ではないな。

 アハトよ。
 お前の人を見る目は確かなようだ」
とレオは言う。

 アローナは、
「ありがたき幸せ」
と言い、礼をした。

「いやいやいや。
 なにがありがたいんですか、アローナ様。
 すさまじく演奏をなじられてますが」

 演奏する方も演奏する方なら、評価する方も評価する方ですよ、とアハトは言ってくるが。

「結果よければ、すべてよしです、アハト様」
とアローナは言い切る。

 レオは、ひと笑いしたあとで、

「だがまあ、確かに歌は素晴らしかった。
 歌の内容はともかく、胸に迫る歌い方であった。

 調理中なにがあったのだろうなと、こちらの妄想をかきたてるのもよいな」
と言ってきた。
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