貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「お聞きになっていらっしゃいませんか?
 レオ様が娼館にいらっしゃって。

 他の娘だと無礼があったら殺されるかもしれないというので、私が酒の席につかされました」

 どうやら、レオが娼館にいたことをジンに言ったものかどうか迷ったアハトが護衛たちに口止めしていたようだった。

 だが、ジンはそもそも、あの父親がおとなしく幽閉されているわけもないと思っていたらしく、特に気にしている風にもなかった。

 気になるのは別のことのようだった。

「お前が父にカーヌーンを弾いてみせたのか」
「はい」

「……父は金を返せと、娼館の女たちに迫ってなかったか」

「だから、面白がってらっしゃいましたよ。
 お父様が弾かれるカーヌーンで、私が歌を歌ったり」

「ずいぶんと楽しそうではないか……」
といじけるジンにアローナは言った。

「あと、シャナは男だとバレてます」

「やはり、あの女好きの父は騙されなかったか。
 まあ、シャナはああ見えて腕が立つから殺されはしないだろうが」

「お父様、それも面白がられてるみたいなので、そのままシャナを置いてくださるんじゃないですかね?」

 何事も起こりそうにないので、シャナの方が飽きて帰ってきそうですね、と言ったのだが。
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