貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「いいや、来るっ。
奴はきっと、俺のところにやってくるっ。
この音が聞こえなくとも、匂いを嗅ぎつけてでもやってくるに違いないっ」
いや、それは犬……と思ったが、なんだかんだでペット愛の深さは伝わってきた。
「わかりました。
じゃあ、私は鷹を呼んでみます」
そう言い、アローナは二本の指を丸めると、指笛を吹いた。
すでに凪いでいる海の上には白い雲が浮かぶばかりで、なにかが飛んでくる気配もなかった。
「……来ないじゃないか」
「ち、近くを通りかかったら来ますよ」
「いつ通りかかるんだ」
人の鷹のときには追求が厳しいな……と思うアローナに、頭は、
「うちのインコの方が早いかもしれん」
と言い放つ。
「いやいや、鷹は翼も大きいし、賢いですからね~っ」
と二人は張り合い、インコと鷹を呼んで、杖を振ったり、指笛を吹いたりし合う。
そんな二人の横で、みんなは地道に船を直していた。