貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「ジン様がアローナ様をメロメロにしていたら、逃げなかったんじゃないですか? と申しておるのです」

 うっ、とジンは詰まった。

「ジン様に不満があったから逃げたんでしょうよ。
 さっさと手籠(てご)めにして、メロメロにしとかないから、こんなことになるんです」

 そこで、側に控えていたフェルナンがぼそりと呟く。

「メロメロになりますかねえ」

 また此処にも余計な一言を言う奴が、と思いながら、ジンはフェルナンを横目に見た。

「ジン様は女性の扱いに慣れておられませんからね。
 ムードもへったくれもなく、迫りそうなんで、余計にアローナ様、逃げてしまいそうですよ」

「ぶ、無礼な者どもめっ。
 普通の王なら斬り殺しているところだぞっ」

 自分としては充分奴らを脅したつもりだったのだが。

 周りに控えている兵たちの顔には、

 ……殺さないんだ。

 やっぱり、殺さないんだ。

 ジン様だもんな~とハッキリ書いてあった。

「だ、だいたい、アローナが私を嫌って逃げたとは限らないだろうっ」

「ほう。
 では、何故、アローナ様は逃げられたと思うのです?」
と答えを強要する家庭教師のように、アハトは言ってくる。
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