貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「あ、愛が深すぎて逃げたのかもしれん……」

「意味がわかりません」

「あるじゃないか、ほら。
 好きになりすぎて、他のことが考えられなくなりそうで、怖いとかっ」

「それはアローナ様じゃなくて、今のジン様の状態ですよ。
 ちなみに、アローナ様のことしか考えられなくなっているのは、好きすぎてじゃなくて。
 次になにをするかわからなくて、ハラハラしているからですけどね。

 どうでもいいですけど。
 さっさと迎えを出してください。

 あの方、放っておくと、なにをしでかすかわかりません。
 メディフィスの恥になります」
とアハトは遠慮会釈なく、今、此処には居ない次期王妃をなじる。

「わかっているっ。
 だが、アローナは何処に……」
と言いかけたとき、

「アローナ様の居所、買いませんか?」
と声がした。

 見ると、右肩にオウム、左肩に鷹を乗せた大柄な美女がアーチ状の広間の入り口に立っていた。

 シャナだ。


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