貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
 いえいえ。
 そのようなつもりは毛頭ございません、と思うアローナの横に、ジンは寝台を(きし)ませ、腰かけた。

「さすが娼館の女だ。
 こんな短時間にこの私をたぶらかすとは」
と言いながら、アローナの頬に触れてくる。

 いや、だから、たぶらかすつもりはありません。

 ……っていうか、もしや、ジン様、たぶらかされたがっているのですか?

 いやいや、無理です、とアローナは後ずさる。

 だが、後ずさった分、ジンは前に出てくる。

「お前が清らかな乙女だとしても、娼館にいたのだ。
 いろいろなことを見聞きして知っているのだろう?」

 いや、だからですね。
 私、娼館には本当に短時間しかいなかったので、あそこで得た新たな知識と言えば、

 『娼館の粥は意外と美味い』
 ってことだけなんですけど……。
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