貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
 アローナは頬に触れているジンの手を振り払うように、身をよじる。

 む、無理ですっ、ジン様っ。
 私に貴方をたぶらかすとかできませんっ、と逃げかけたとき、
「ジン様っ」
とまたフェルナンの声がした。

「アローナ姫の従者のひとりが早馬でやってまいりましたっ」

 やったっ、とアローナは立ち上がったが、それより早くにジンが立ち上がり、
「わかった。
 砂漠から駆けてきたのなら、疲れているだろうから、手厚くもてなしてやれ」

 そう言いながら、出て行ってしまう。

 振り返り、
「娘よ、此処から動くな」
と言ったあとで。

 フェルナンは何故か王を追わずに此処に残った。

 ジロリとアローナを見て言う。

「娘よ……。
 お前は何故、鷹が扱えるのだ。

 お前は本当に刺客なのか?」

 そう問うたあとで、フェルナンは、ふっと溜息をつく。
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