貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「まあいい。
 このことは黙っていろ。

 命じられなくとも、しゃべれぬだろうがな」
とフェルナンは言ったが。

 いやいや、もうすぐ私の供の者が来ますからね。

 筆談もできると思いますよ。
 そうアローナは余裕をかましていた。

 でも……、とフェルナンを見ながら、アローナは思う。

 この人、ジン様に忠誠を尽くしているのは、ほんとうみたいなんだよな。
 そのいとこさんが助け出せればいいんだけど……。

 あの、あなたに命じている人は誰なんですか?

 そうアローナはジェスチャーで伝えてみた。

 フェルナンは、
「それは……」
と言いよどんだが。
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