貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「仕方ないな。
 お前には弱みを握られてしまったからな」
と言って、部屋の扉を開けた。

 廊下に誰かいないか確認しているのかなと思ったが、フェルナンは廊下に向かって叫ぶ。

「おい、誰か。
 新しいワインを持ってこい。

 今、部屋にあるのとは違うやつ」

 こちらを見て、
「まったく娼館の女は贅沢だな」
と言う。

 どうやら、部屋のワインがいまいちだ、と訴えたと思われたようだ。

 いやいや、違うんですよ、と顔の前で手を振ると、
「なんだ。
 それもダメかもしれないから、もう一本持ってこい?
 可愛い顔して酒豪だな」
と言い出す。

 ……なにも通じていないようだ。
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