貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 探してくれるのありがたいけど、此処に来てー、とアローナは去ってしまった従者を追うように窓の外を見た。

 だが、美しい庭には誰の姿もない。

 フェルナンと鷹は出て行き、ジンだけが部屋に残っている。

「どうした。
 此処から帰りたいのか。

 っていうか、何処から来たんだ、お前は。
 娼館に来る前は何処にいたんだ?」

 アッサンドラですっ、と身振り手振りで伝えると、
「そうか……」
と言って頷いたジンは扉を開けると、廊下に向かって叫んだ。

「おい、誰か新しいワインを持て」

 ……私のアクションになにか問題があるようだ、と思いながらも、もうそのまま、ワインを持ってきてもらうことにした。
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