貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
 おのれのグラスを置いたジンはさっき鷹が飛んでいった窓の方を見て呟く。

「姫が見つかったらどうするのか迷うところだが、とりあえずは無事に見つけないとな」

 ジンは最初に送った一小隊に追加して、城の兵たちも姫の捜索に向かわせたようだった。

「それにしても、姫は何処に」

 此処です。

「なにかの事件に巻き込まれたのだろうか」

 巻き込まれてます。

「いや、意外と、父との婚姻が嫌で逃げ出したのかもしれぬな」

 逃げ出したいところだったんですけど。

 それだと国の人たちが困りますからね。

「……それか、あるいは、初めて国の外に出て、浮かれて迷子になったとか」

 いや、私、どんだけマヌケに想定されてるんですか、と思いはしたが。

 深窓の姫が初めて外に出て、浮かれて、うっかり、というのは、まあ、ないでもないかもしれない。
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