貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


「フェルナン様を書面で脅しているのはアハト様ですよ」
とシャナは言う。

「えっ? そうなんですか?」
とアローナが口の動きで返事をすると、

「フェルナン様は自分が誰に脅されてるのかもご存知ないみたいですけどね。
 ですので、どうか、私にアハト様を殺せとご命じください」
とシャナは言ってくる。

 いや、いきなりか……と思いながら、アローナはシャナに訊いた。
 
「あの、そのフェルナンのいとこさんは今、どうなってるんです?」

「普通にしてると思いますよ」

 はい?

「アハト様は、お前のいとこがどうなってもいいのかと手紙で脅しただけです。
 なにもしていません。

 それでフェルナン様がビビッてなにかしてくれればラッキーくらいの感じみたいです。

 そもそもフェルナン様が王を殺すとも思ってないんじゃないですか?

 ただそれで、王と腹心の部下のフェルナン様の間に亀裂が入ればいいと思ってるだけなのでは?」
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