貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
 砂漠でオアシスに立ち寄ったとき、水場に行こうとした瞬間、盗賊みたいな連中に横抱きにされて、馬でさらわれたのだ。

 此処に売られる前に、謎の薬を飲まされ、声も失った。

 余計なことをしゃべらないようにだろう。

 たどり着いた此処が娼館だと気づくまでは時間がかからなかったが。

 ……ま、さっき着いたばっかりなんで、まだ、なんの被害も受けていないんだが。

 このおじさんに買われてしまうのだろうか……。

 それは結構な被害だな、とアローナは思った。

 うーむ。
 外に出たところで、頭突きをして逃げるか。

 でも、不案内な街だしなー。

 逃げたところで、此処より恐ろしいところに迷い込んでしまうかもしれないし。

 っていうか、そもそも、このおじさんが私でいいと言うかもわからないしなー、と思っていたのだが。

 そのローブの男は、アローナを見て、感心したように、ほう、と言う。
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