貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「アハト様は、フェルナンのいとこになにかする気はあるんですかね?」

「ないんじゃないですか?」
とシャナはあっさり言った。

「フェルナン様の一族ともめたくはないでしょうから。
 特に今は。

 自分が連れてきたあなたを王がいたくお気に入りですからね。

 むしろ、今、余計なことすんなよ。
 新しい王に気に入られるかもしれないのに、とか思ってそうですよね」

「……じゃあ、アハト様を殺す必要ないんじゃないですか?」

「……ないかもしれませんが。
 仕事ください」
とシャナは言う。

 なにかが切実そうだ。

「あのー、シャナさんは、殺す以外の仕事はできないんですか?」

 そうアローナは訊いてみたが、シャナは少し考えている風に白い天井を見上げたあとで、
「それが私、他の仕事はしたことがないんですよね」
と言ってきた。
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