貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「だから、さっき、ジン様がアローナ様の頬にキス……

 したあとですかね?」

 ……前ですかね?

 っていうか、その情報を先に言ってっ、と思いながら、アローナは部屋を飛び出した。

 広い廊下に飛び出すと、見張りに立っていた衛兵がギョッとした顔をする。

 ジン様ーっ!
と叫ぶが声が出ない。

 気がついたら、横をシャナが走っている。

 もっと早く走れるのではないかと思うが、アローナに合わせているようだ。

「雇ってくださったら、代わりに叫んで差し上げてもいいですよ」

 いいっ。
 なにかで音を立てるからっ、とアローナは口をぱくぱくさせて伝える。




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